おもろとは、想い、祈り、そして歌。

沖縄最古の歌謡集「おもろさうし」。おもろとは「想い」。さうし(草紙)とは、紙を綴じて作った「書籍」のこと。おもろさうしとは、人々の想いの記録なのである。これが何なのかを考えるためには、それぞれの言葉をもう少し詳しくひもとく必要がある。

まずは、おもろ。その起源は祈りの言葉、あるいは神女たちの歌う「神歌」だったと考えられている。古来、この島では政治をつかさどるのは男性、祈りは女性の役割だった。神と通じる力は女性の方が強いとされ、村々では女性たちが御嶽や拝所で村人たちの幸せや、自然からの恵みを祈願する祭祀を執り行った。そこで行われた「祈り」がおもろ。それは神と人との対話であり、感謝の想いだったのだ。

琉球王国が誕生すると、国家においては、王族の女性を最高位の司祭として、聞得大君を位置づけ、地方においては、各村に神女が任命された。王国はこの各地のノロたちが歌っていたおもろを収集して編纂した。その記録がこの「おもろさうし」である。

そこには琉球王国の成り立ちを語る歌や、国王や聞得大君を讃える歌、自然や天気にまつわる歌や、長い航海から帰って来た進貢船の到着を迎える歌などが、叙事詩として記載されている。琉球王国の成り立ちや世界観、様々な行事や出来事を伝えるこの本は、歌謡集、文学作品であると同時に、ノンフィクションでもあるのだ。

琉球を知る貴重な資料だが、いまなお諸説の見解があり、研究が進められている。組踊や琉歌の他、現在の沖縄の民謡の起源ともいえる「おもろさうし」。読み解くことができれば、そこには沖縄の心の原点が詰まっているにちがいない。

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