税金の一部は布で納める。 年齢で分けられた「働き手の世代」とは?

沖縄は日本の中でも特に多様な織物があることで知られる。アジアの国々からの文化的な影響や、亜熱帯気候で植物が育ちやすく織物と染色の材料が豊富なことも理由であるが、もうひとつ、貢納布といって税を布で代納する制度があったことも大きい。

目の前の模型は八重山の人々が、この貢納布の生産に取り組む様子を再現したものだ。まず、首里王府から次の年にはこの布が欲しいと布の幅や長さ、模様、色を詳細に記載した注文書と絵図(デザイン画)が届けられる。それを受けて八重山や宮古の人々は、植物から繊維を取り出し、それぞれの糸を染めて絣を織り、さらに出来上がった布を染める。八重山や宮古で仕上った布は島の役人たちによって事細かに検品され、海を渡って首里王府へ。首里王府まで届いたのちにも不合格として返品されることもあった。貢納布の制度は村々にとって大きな負担だったものの、結果として優れた染織文化を生んだという側面もある。

ところで。数え年で15歳以上になると税を納めないといけないのだが、その中でも「上」「中」「下」そして「下下」と年齢によって負担率が4段階に分かれていた。「上」の負担が一番大きく21歳から40歳くらいまでの働き盛りの世代。「中」はその上の世代の41歳から45歳くらいまで。では、「下」、「下下」にあたる世代はどこだろう?

実は「下」は46歳以上の年配世代で、「下下」が15歳から20歳までの若者達。どうも若者は未熟で、年配世代の方が頼りになると考えられていたらしい。今日の沖縄で、おばあさんやおじいさんが尊敬の念を集めるのは、こんな歴史的な背景もあるのかもしれない。

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