その名も貝摺奉行所。
琉球の名産のひとつは夜光貝で、品質が高く良い螺鈿が作れる。そのため琉球王国は中国や日本に対して、螺鈿を施した漆器などを贈った。貝摺奉行所は、この漆器製作に関することを管理する役所。展示されている貝摺奉行所文書にはどのような理由で誰に贈るための漆器なのか、また、形や文様から使用する材料までが細かく書かれている。今風に言うならば、仕様設計書、兼、稟議書。担当の役人から奉行まで順番に判を押していたあたり、役所とは今も昔も変わらない。
隣に展示されている中央卓は東アジアで広く使用されたタイプの漆器だ。当時の日本では「唐物」と呼ばれる中国などで作られた道具が好まれ、日本に贈られた琉球漆器も「唐物」として大変喜ばれた。中央卓は香炉や生花のための飾り台として床の間に置かれ、後ろには掛け軸が掛けられていたと考えられる。当時の人たちも季節のテーマや流行を取り入れ、トータルコーディネートを楽しむ美意識を持っていたのだろう。一体どのような花を生け、どのような香りを楽しんでいたのだろうか。
各地に贈られた漆器はいまも世界のどこかにある。この文書に描かれている仕様とぴたりと一致したら、それは琉球漆器と証明できることになる。あなたが世界のどこかで見かけたら、ぜひ博物館にご一報を。