邸内を巡るときは、たまにガイドを止めて目を閉じ、周りの音を聞いてみよう。聞こえてくるのは、せせらぎの流れる音。庭に集まる鳥の鳴き声。風が木の葉を揺らす音。これらの音は、景観とともに無鄰菴の体験を豊かなものにしてくれる。
私たちは周囲の音を聞いて周りにある物を認識し、空間を把握しているという。たとえば、目が見えない人は周囲の音から状況を把握して、まるで目が見えているように行動する。普段意識することは多くないが、それだけ音は私たちの行動や意識に影響を与えているのだ。音に注目できるようになれば、体験は厚みを増す。これは視覚・聴覚以外の味覚・触覚・嗅覚にも言えること。せっかく京都まで来たのだから五感をフルに活用して、余すことなくこの空間を楽しんでいこう。