鵜の首に綱をくくり、巧みに操って鮎を捕らせる鵜飼。そんな漁の方法は古くから当たり前にあり、私にとってはそう珍しいものではなかった。鵜は人に懐きやすく、「鵜の目鷹の目」ということわざがあるように、鷹にも劣らない視力を持っているという。鵜は、視界に入る鮎をすべて丸飲みにする。他の漁に比べると大変効率が良い。網に掛かった鮎は暴れて傷がつき、傷みやすい。それに対して鵜に捕らせれば、鮎は一瞬で絶命するがゆえに、鮮度を保ったまま流通に乗せられる。しかし鵜飼は、他の漁師たちに嫌われてきた。鵜は手頃な大きさの鮎以外にも、大量の魚をまさに「鵜呑み」にしてしまうからだ。

よそからやってきた者の視点なのだろうか、信長様はこの鵜飼を大変面白がったという。野性の動物を使って漁をさせるその方法は、鷹狩りを連想させたのかもしれない。信長様は、鷹匠と同様に、鵜飼の漁師らにも「鵜匠」という称号を与え、禄を与えて保護をした。確かに言われてみれば、夜の川面を照らすかがり火はなんとも美しく、個性豊かな鵜の様子は見ていて飽きない。漁までももてなしの道具に変えるとは、恐るべき柔軟な発想である……。


【解説】永禄11年(1568年)、武田信玄の使者として秋山伯耆守が信長の元に訪れている。信長の嫡男・信忠と、信玄の娘・松姫との婚約に伴い、祝儀を届けにやってきたのだ。信長は、この秋山伯耆守を鵜飼見物でもてなしている。さらに後日、信長が自ら選んだ鮎を信玄に届けさせたという。
現在、長良川の鵜飼は、5月11日から10月15日の間、中秋の名月および増水・強風時を除いて毎日行われている(観覧船に乗るには鵜飼観覧船事務所へ事前予約が必要となる)。かがり火に照らされる鵜飼がより美しく見えるよう、この時間帯には川沿いのホテルも灯りを消している。

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