茶の湯に抹茶は欠かせないが、飲んだことはあっても、飲む前の工程を知る人は少ないのではないだろうか。一体どうやって、茶葉を細かい粉末状にするのか?どのようにして、香りや味わいの違うお茶にブレンドするのか?

ここ、抹茶ミュージアム「西条園和く和く」では、抹茶の生産工程を、実際に体験を交えて楽しめる。運営しているのは、老舗の茶屋、あいやだ。

抹茶の製造工程は、栽培の段階から始まる。茶葉は日光に当たることで苦味や渋み成分が増すため、甘みや旨みが重視される抹茶用の茶葉には、新芽が出る春先から黒い覆いがかけられる。こうすることで、旨味成分も増えるという。茶葉のほとんどが抹茶用に使われる西尾では、4月から5月にかけて、茶畑が一面黒く覆われるそうだ。

茶葉の味わいや香りは、この覆いをかける時期などで変わってくる。そのため、収穫した茶葉を乾燥し、茎や葉脈を取り除いて粉砕した、てん茶の状態で、香りや味わいの特徴を見極め、グレード分けやブレンドを行う。抹茶と一口に言っても、茶道用とお菓子などに使う食品加工用では求められる味わいは違う。食品加工用抹茶には乳製品などと混ぜても抹茶の味わいがわかりやすいように、苦味や渋みが重要とされるのだ。ミュージアムでは、茶道用と食品加工用のてん茶をテイスティングできるので、ぜひ、違いを体験して欲しい。

てん茶は、パッと見はお好み焼きにかける青海苔にも似ていて、これを茶臼という抹茶専用の石臼で挽く。茶臼は、カーリングのストーンのような石を二つ重ねたもので、上下が接する面には放射状に細かい溝が彫られており、ここにてん茶が入り、上の石を回転させることで、茶葉を粉砕し、わずか数ミクロンという細かい粒子に仕上げる。

茶臼を早く回しすぎると熱で抹茶の風味が損なわれ、遅すぎると細かい粒子になりにくく、1秒に1回転くらいが良いとされている。実際に茶臼で挽いてみると、臼の重さに驚くだろう。一服分の抹茶を挽くのに5分ほどかかるが、二の腕が筋肉痛になりそうなほどの重労働だ。徳川美術館の猿面茶室の水屋には、茶臼が置かれており、客人に毎回挽きたてのお抹茶を振舞っていたそうだが、こうしたおもてなしは、かなりの体力仕事だったのだと気付かされるに違いない。

さて、最後は自分で挽いた抹茶を点てて、一服ついて終わりとなる。体験コースは全て、前日までにウェブおよび電話での予約制で、すぐに満席になってしまうので、興味のある方はあらかじめ予約状況をウェブで確認してから訪れることをお勧めする。

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