苔むした山道を登っていくと、立ちはだかるのは巨石群。いざ、岩のトンネルをくぐり抜けるとドカン!!! とあらわる滝ストリーム!

「滝を見に行かない?」と誘われた時、「おお!!いいね!!」とテンションがマックスになる人はどれぐらいいるだろう。「滝か、まあ、いいよ」ぐらいの人も少なくないと思う。

滝が大好きな滝マニアにも、滝に対してあまり思い入れがない人にも、お勧めしたい滝が十津川村にある。村の外れの細い道をグングンと突き進んでいくと現れる、「笹の滝」だ。

観光地の滝といえば遠くから眺めるパターンがありがちだけど、笹の滝はまったく違う。駐車場から、全貌は見えない。車から降りて、ゴツゴツした崖にへばりつくようにして枝を伸ばしている木々、芝生のように苔むした巨石を見ながら、滝へ通じる歩道を進んでいく。まるで映画『もののけ姫』の世界だ。

しばらくすると、崖と落石の間にできた狭いスペースに鎖が渡してあるのが見える。その鎖を伝って穴をくぐり、反対側に出るのだ。このあたりから、冒険気分になる。

鎖を握りながら、穴をくぐる。その穴を抜けた瞬間、眼前に笹の滝が全貌を現す。川の水が32メートルの高さから豪快に滝つぼに降り注ぎ、水しぶきのなかで透き通った清流が勢いよく流れゆく様子は、まさに絶景だ。

笹の滝には、手すりやフェンスがない。まさに、手付かず。思い切って、なおかつ細心の注意を払いながら、川から頭を出している岩をトントンと渡っていけば、川の上から滝を眺めることもできる。目をつむって滝の音や川の流れに耳を傾けると、心が静まり、細胞が浄化されているような気分になる。

「十津川には数えきれないぐらい滝があるけど、やっぱりここが一番やね」というのは、十津川村の文化協会会長で、アマチュア写真家の佐古金一さん。通称、金ちゃんだ。

十津川村で生まれ育ち、地元の小中高に通った後、十津川村の郵便局に就職して定年まで勤めあげた。就職した時に研修で1カ月間、京都に滞在したのが最も長く十津川村から離れていた時期だというから驚きだ。

まさに生粋の十津川男の金ちゃん、今はバイクのツーリング(バイクを4台所有!)と高校時代から続けている写真を趣味に、悠々自適の生活を送っている。十津川村には写真クラブがあって、メンバー9名で村の写真を撮り歩いているそうだ。村の滝にも季節ごとに通い詰めていて、詳しい。

「笹の滝のお勧めは、秋やね。毎年11月の10日前後にきれいに紅葉するんですよ。陽が当たると、モミジが真っ赤に染まってね。陽が当たるのは午後の短い時間だから、ほかの写真家もその時間を狙ってくるね」

カメラを持っている人にはお勧めしないけど、笹の滝のお楽しみはこれからだ。命綱のような鎖は、岩の上を通って滝つぼの近くまで続いている。もし勇気があれば、そして滑りやすい靴を履いていなければ、鎖をたどって、その先に行ってみよう。轟音を立てる滝つぼを、間近に見ることができる。もちろん、足を滑らせたら滝つぼに一直線。ここまで来たら、完全にアドベンチャー体験だ。流されないように、気を付けて。

笹の滝に来て滝の魅力を知った僕たちは、金ちゃんに「十津川村でお気に入りの滝ベスト3」を尋ねた。季節ごとに滝の写真を撮っている金ちゃんが挙げたのは、次のページの3か所。

十津川村にはほかにも高滝(たかたき)、十二滝(じゅうにたき)など写真映えする滝があるそう。滝巡りをして、自分好みの滝を見つけるのも、通の旅かもしれない。そこで金ちゃんに会ったら、気軽に話しかけてほしい。撮りためた自信作を見せてくれるはず!

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