あなたは道真のお墓の前に来た。そんな場所を前にして、何を感じるだろうか。

多くの神社と異なり、拝殿のない様式はとても珍しく、より近くで道真の存在を感じることができる。まずは心静かに「二礼二拍手一礼」の作法で参拝しよう。

参拝を終えたら次の文章を読んでほしい。

参拝を終えた、そのあとに。

大宰府に左遷された道真に付き従った弟子がいた。その弟子は道真の大宰府での暮らしを助け、道真の遺言を聞いて牛車を引いた。そして、牛がうずくまったこの場所にお墓を建てた。その弟子の名を「味酒安行」という。

「きっと、最後の最後まで道真から学びたいと考えていたのでしょう」

そう語ってくれたのは、太宰府天満宮の神職である味酒安則さん。そう、味酒安行から数えて42代目の子孫である。

しかし、驚くのはまだ早い。太宰府天満宮の宮司を務める西高辻家はなんと、菅原道真の直系の子孫であり1100年以上経つ今まで道真のお墓を守り続けてきたのだ。

太宰府天満宮では「道真公が生きていらしたらどう思うのか」ということがあらゆる場面で考えられている。

たとえば、毎月25日の月次祭。25という数字は、道真の誕生日が6月25日、命日が2月25日と、ご縁のあるたいせつな数字だから。誕生日や命日の月次祭では季節をより感じられるものをお供えするようになっていて、その心には、道真の神霊(みたま)を飽きることなく喜ばせたい、という考えがある。

また、25年ごとに大きなお祭りも行われる。次は令和9年。道真の神霊(みたま)が永遠に鎮まる聖地として、本殿の屋根の葺き替えをはじめとした大改修も行われる。神社全体が再生することで訪れる多くの参拝者も活力を得るのだ。

参拝を終えたら、境内の樟を見上げてみてほしい。太宰府天満宮には現在も100本以上の樟があり、樹齢1500年といわれる大樟や夫婦樟も生命力をあふれさせている。職員たちの手によって、百年後、千年後も変わらない姿を残すための努力が続けられていて、1100年たっても変わらない景色がここにはある。神社とは訪れるたびに原点に立ち戻れるような「心のふるさと」なのだ。

また、道真の文化の神様としての神徳にちなみ、境内のあちらこちらで、太宰府天満宮をテーマにした現代アートを見ることができる。

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