博物館の見どころはたくさんあるが、たとえば、4階・文化交流展示室の「鬼瓦」に注目してほしい。

鬼瓦とは、悪いものを寄せ付けないための守り神。博物館にある鬼瓦は大宰府政庁に掲げられていたものだが、その展示をどう見るか。たとえば、鬼瓦の前でしゃがんで見てほしい。

睨みをきかせたその顔、鬼瓦は建物の屋根の四隅から人々を見下ろすもの。だからこそ、見上げてみるとバチリと目があうはずだ。そして、想像してほしい。「大宰府政庁にあった鬼瓦は古代の人々の目にどう映ったのだろう」と。

この鬼瓦は、大伴旅人も、最澄も、菅原道真も、このガイドに登場したあらゆる人物が目にしたはずだ。そして、この鬼瓦の立体的な造形に等しく感銘を受けたことだろう。

なぜ、このような鬼瓦が生まれたのか?

しゃがんで見たら、あらためて立ち上がって見てほしい。すると、目を巨大にしたり、ほっぺたを出っ張らせたり、作者によってデフォルメされていることが見えてくる。

鬼瓦は新羅から伝わったと考えられているが、新羅の鬼瓦は平面的なものが多い。しかし、太宰府の鬼瓦は驚くほど立体的。その原型は唐の獅子像。これを新羅由来の鬼瓦に取り入れたところにオリジナリティがある。まさに文化が交流する大宰府ならではのデザイン。当時の唐や新羅の人はもちろん、現代の中国や韓国の人も自国との共通点を感じたことだろう。

見れば見るほど「まるで仏像のようだ」と思うかもしれない。それもそのはずで、この鬼瓦の型は「仏師」が彫ったと言われている。

実は、太宰府ではあらゆる分野の職人たちが、ひとつの工房で働いていた。だからこそ異業種が混じりあって「瓦職人×仏師」というようなコラボレーションが生まれたのだ。

あるいは、その陰影を見せるための博物館の照明に対するこだわりに気づいた人もいるかもしれない。九州国立博物館では、ひとつひとつの展示物を見せるための工夫が随所でなされている。ぜひ、鑑賞を続けてほしい。

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