最澄が灯した火を1200年も受け継いできたと言われる火が、ここにある。それもつい最近まで、ある家の竈で、毎日、薪をくべて守られてきたが、いよいよ引き継ぎが難しくなって、この妙香庵に受け継がれることになったという。

住職の方がいれば、たいせつに守られている種火の様子も見せてもらえる。そして、親切にお話を聞かせてくれることだろう。

「毎日、油を足しているのですが、油は3日もすれば完全に無くなって火が消えてしまいます。だから、“誰かがやってくれるだろう”ではなくて、誰もが自分のことと考えて火を守らなくてはいけません。京都の比叡山にある火も、当番の人を設けずに守られています。油を断つわけにはいかない。“油断できない”とは、そこからきた言葉なんですよ。」

末法と言われ、仏の教えが消えかけている今、妙香庵が受け継いだのは火だけではない。最澄の教えという、心の灯火を受け継いだということ。住職の胸の内には常に「気がかり」として火のことがあるという。それは、常に仏の教えが心の中にあるということなのかもしれない。

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