展示室の入り口に掲げられた、大きな絵。これは、『アリエスの乙女たち』『天上の虹』などで知られる漫画家・里中満智子に横手市が依頼し、描き下ろされたもの。題名は『万葉の集い』。2019年5月にリニューアルオープンするまんが美術館の門出を祝して描かれた。古代史など歴史を題材にした作品も多い里中は、身分や地位にかかわらず歌い継がれた「万葉の歌」のように、いつの時代も私たちに夢やロマンを与えてくれる「マンガ文化」が、時代を超えて読み継がれ、未来へと永遠に紡がれていくようにという願いをこの絵に込めた。天女の羽衣の縦糸は未来につながっていく歴史、横糸はその時々に起こっている事柄や、マンガでいえばその時代の作品を示している。

2019年4月20日に行われたリニューアルオープンの式典で、里中はマンガという日本を代表する文化の保存に全国に先駆けて着目し、横手市が積極的にマンガ原画を大規模収蔵するこの取り組みに対して深く感謝の意を表した。同時に、アーカイブというのは100年、200年の単位でその真価を発揮する事業であるとし、こう語った。

「日本は独自のマンガ文化が発展しました。夢見ておりますのは、100年、200年後に『かつて日本は新しい表現を生み出したマンガにおけるルネッサンスを生み出した国である』と言われることです。200年後の世界の皆さんが、日本のマンガのルネッサンス期を研究し、時代が変わっても味わい、読み返すことができる場所。それがここ、まんが美術館です。200年後のマンガ界を支えるために、今があるのです。私はその日を幽霊になってでも見届けたい。もし願い通りにならなかったら化けて出ますからね(笑)」

と。これを聞いた関係者は、何がなんでも次世代に繋げなければならないと心した。この里中流のユーモアが込められた横手市への「感謝と想い」発言は後世まで語り継がれるだろう。

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