一度足並みをそろえてみると、そのかけ声をすっかり覚えてしまうだろう。

サッカサイ サッカサッサイ サカサッサイト ソラヨイヤサカサ……

繁栄と豊漁を祈願するこのかけ声は、「いよいよ栄える」という意味の「弥栄」がもとになっている。「ソラヨイヤサカ」のところで、息を合わせて奉燈を抛り上げる。少し離れて見ていると、まるで海の高波のようだ。ぴったりとあったこのテンポだが、祭りの前に練習しているわけではない。毎年ぶっつけ本番なのだ。とはいえ、石崎町の子どもたちには、当たり前のように染みついている。教室の机を運ぶときでさえ、かけ声は「サッカサイ!」だ。

ここでは、残念ながら奉燈の重さまでは体験できない。ギシギシとのしかかる重さに、若衆の肩は紅色に染まる。足が乱れて息が合わないときには、いっそう重たく感じる。しかし、若衆の息がぴったり合ったときには、肩から浮くほどに軽々と持ち上がるという。

統制・規律がなくては成り立たないこの祭り。その要となるのは、20代後半の若き「支部長」たちだ。支部長とは、各町会で18歳から30歳までの青年で形成される組織の長のことだ。任期は一年で、祭りの全指揮権を担う。町の若者たちが憧れる存在だ。巨大な奉燈は、この支部長の笛ひとつで指揮される。

支部長になりたいがために、町を離れない若者が多い。しかし、そう簡単に支部長になれるわけではない。町内の行事に関わりながら、年長者との信頼関係を築いていく。年長者だけでなく、若衆にも慕われる人望がなくてはならない。支部長に選ばれると、祭りまでの一年はどこの会議や行事でも「支部長!」と呼ばれ、石崎町の言葉でいうと「たっぱえられる」。町の人から敬われる大変名誉な役なのである。祭りの準備は、一ヶ月前から支部長の家で始まる。家族は集まる若衆に料理を出し、もてなすのだ。

石崎町の人々にとって、祭りは正月よりも重要な節目だ。青年団役員の交代も祭りの翌日に行われる。都会などへ出ている人たちも、盆や正月には戻ってこなくても、祭りの日には帰って来るという。同窓会も、祭りの翌日に行われることが多い。

6基の奉燈が一堂に会する堂前広場は、この祭りの一番の見せ場だ。ここで最も元気に担げるように、体力の消耗具合を見計らって指揮をするのが支部長の腕の見せ所となる。夜の8時になると、町には合図の花火が上がる。奉燈に灯りが点る幻想的な様子は、遠くから眺めても見応えがある。ぜひ、昼間のカラフルな彩りと、夜の幻想的な姿を見比べてほしい。

Next Contents

Select language