「小さな石の門をくぐると、空気が変わったことに気がつくだろうか?」

首里城には大きく分けて、3つのエリアがある。政治が行われていた正殿、王様の暮らしていた御内原(うーちばら)、そして、ここ「京の内」(きょうのうち)。京の内とは、霊力の強い場所という意味。つまりここは聖域なのだ。

もともと沖縄では、神と通じる力は女性の方が強いとされており、琉球王国が誕生する遥か前から、祈りは女性たちの役割だった。村々の女性たちは、神様が降りてくるとされる木や岩のある「御嶽(うたき)」や「拝所(はいしょ)」で、村人たちの安全や自然の恵みを祈願していた。

琉球王国が誕生すると、王国は男の世界である政治を組織化したのと同様に、女たちの祈りの世界をも組織化した。

各村には、地方での祭祀を執り行う神女(のろ)が任命された。神女は、国から任命された神職で、今風に言えば、祈りの公務員ということになる。そして、最高位の司祭、聞得大君(きこえおおきみ)には、王族の女性が就任した。王国内の最高権力者が王様、神女の最高位が聞得大君というわけだ。

聞得大君は、国王と、王国全体を霊的に守護するものとして崇められ、国王の長寿、国の繁栄、五穀豊穣、航海安全などを祈願した。

京の内は、この聞得大君をはじめとした神女たちが様々な祭祀を執り行う首里城内最大の信仰儀式の場だったのだ。

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