「この物見台は、なにを見る場所だったのだろうか?」

物見台からは南部一帯が見える。あらためて、首里城が小高い丘に立っている、ということが再認識できるだろう。外壁に向かって右手、つまり西に見えるのが、東シナ海。そして、左側、つまりに東には、3つの重要なスポットがある。

一番左手に見えるのが、弁ヶ嶽。ここは山自体が御嶽とされている。

その少し右。天気が良ければ遠い海の向こうに薄く島影が見えるのが、久高島。異界の楽園ニライカナイからやってきた琉球の祖神、アマミキヨが降り立ったといわれる神の島だ。

さらに右に視線をずらして、山の上が少し凹んで見えるあたりが斎場御嶽、ここは数ある御嶽の中でも琉球王国最高の聖地として、王府が直接管理をしていた。聞得大君の就任儀礼もこの御嶽で行われ、その際には首里城から出発した聞得大君の行列に各地の神役たちが参列する一大行事が行われた。

どれも大切な聖地ではあるが、毎日通うわけにはいかない。そこで三点遥拝といって、この物見台から三つの聖地の方向に向かい国の安全や繁栄を祈っていたと考えられている。

ところで、久高島や斎場御嶽に比べると知名度が低い弁ヶ嶽だが、実は首里で一番高い山、そして風水的には、自然界のエネルギー、つまり「気」が湧く山ともされている。琉球王国は多くの留学生を中国に派遣して風水を学ばせており、沖縄では家や墓にも風水思想の影響が見られる。留学から戻ってきた彼らは、首里城が、後方の弁ヶ嶽から「気」が流れこむ「良い場所」にあると見立てた。風水を大事にした王国の人たちにとっても、弁ヶ嶽はとても大切な山であったのだろう。

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