なぜここに植えられているキイチゴを食べていたのか?

かつては畑と雑木林に囲まれていたと伝えられている北城郭。その一角に、国王や王妃が好んで食べたのではないかとされる木苺が植えられている。なぜか? それは1832年に首里王府に上梓された『御膳本草』という本に、キイチゴには子宝を授かる効能があると書かれているからだ。

『御膳本草』は、王の食卓に提供する食材約300種類の性質や効能、食べ合わせの禁忌を記した、琉球食料の医学書だ。本には今でも沖縄で使われているゴーヤーなど馴染みの食材が登場する。

編纂したのは渡嘉敷通寛というお医者さん。彼は中国に2度留学して当時最先端の医療を学んだ。その内容、内科、外科、眼科、医薬学、精神科、鍼治療、産婦人科、小児科と幅広く、帰国後は王族の治療や出産、他の医師の指導にあたった。そんな彼の知識と経験を詰め込んだのが、この『御膳本草』なのだ。

健康長寿で知られる沖縄には昔から「食は薬(くすいむん)」という考え方がある。いまでいう「医食同源」だ。食べ物で治療するという考えを基本として書かれた『御膳本草』は、その原典といえるかもしれない。

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