これは、ここ隨心院のある小野の地に、子どもたちの踊りして伝えられてきた「はねず踊り」です。「はねず」とは薄紅色の古語で、ピンクとオレンジの間の様な色のことを指します。また、庭に咲く梅のことを「はねずの梅」と呼んでいます。随心院では毎年、花の咲き乱れる3月の最終日曜日に、地元の小学生によってこの踊りが奉納されます。
小町と深草少将との伝説は、悲しい恋として語られることが多い物語です。しかし、随心院に伝わる「はねず踊り」で歌われる結末は、まるで笑い話のよう。もしかすると年老いた小町は、遊びにやってくる子どもたちを楽しませようと、かつての恋を面白おかしく物語っていたのかもしれません。
あーりゃ これ これ
これは楽しや 小野のお寺の 踊りでござる
はねず踊りと 申してござる
めでた めでたの こりゃせ おどりでござる
みんなそろうて さぁ おどりはじめじゃ
めでたやな めでたやな
一
少将さまがござる 深草からでござる
毎夜よさりに 通うてござる
かやの木の実で 九つ十と
日かずかぞえて ちょいとかいまみりゃ
今日もてくてく よー おかよいじゃ
二
少将さまがござる 深草からでござる
雪の夜みちを とぼとぼござる
今日でどうやら 九十と九夜
百夜まだでも まぁおはいりと
あけてびっくり よー おかわりじゃ
【現代語訳】
あーりゃ これ これ
これは楽しい 小野のお寺の踊りだよ
はねず踊りと いうのだよ
めでたい めでたい(こりゃせ♪)おどりだよ
みんなそろって さぁ おどりはじめよう
めでたいな めでたいな
一
少将さまが来るよ 深草から来るよ
毎晩毎晩 通ってくるよ
かやの木の実で 九つ十と
日にちを数えて ちょっと顔を出せば
今日もてくてく よく お通いだね
二
少将さまが来るよ 深草から来るよ
雪の夜道を とぼとぼ来るよ
今日でどうやら 九十と九日目
百夜はまだでも 「まぁお入りなさい」
開けてびっくり あら 別人だ