壁画の中央、夏の場面で繰り広げられるのが「竿燈祭り」の場面である。

8月の初めに280本もの竿燈が集まり、お囃子にのって見事な技を繰り広げる「竿燈祭り」。見渡す夜空は黄金色に光る稲穂が風にそよぐよう。自分の町の印である「町紋」を染め抜いた提灯が夜空を彩り、紺色をベースにした半纏を粋に着こなした差し手たちが技を競い合う、押しも押されもせぬ秋田の夏の風物詩だ。

竿燈祭りは威勢のいい町人の祭りで、現在もたくさんの町内や企業が参加する賑やかなものだ。元は七夕の時期に行われていた病魔や邪気を払う「ねぶり流し行事」が起こりだという。そのため、今でも竿燈祭りのことを「タナバタ」とか「ねぶり流し」と呼ぶ秋田市民も少なくない。

かつて、竿燈祭りは持ち上げる竿燈の重さを競う「力自慢」の祭りであったが、時代とともに「技」を競う祭りに変わっていった。最初に覚える「肩」。次の指し手が継ぎ竹を継ぎやすいように支える「流し」。手のひらに乗せて高々とかざす、力強く豪快な「平手」。首の根っこが据わり、重厚感に溢れる「額」。ひねった腰に竿を置く、派手な演技「腰」。いずれも、木の根っこが生えたように動かなくなるのがうまい差し手の証とされる。

毎年6月頃になると、秋田の町のそこここでお囃子が聞かれるようになる。各町内会が竿燈をあげる練習をしているのだ。お囃子が聞こえ出すと、「ああ、秋田にも夏が来た」と感じる人は多いという。秋田の子どもたちは、長い棒を見て「ほら見て、竿燈だよ! ドッコイショー!ドッコイショ!」とあげてみた経験が誰でも一度はあるという。それほど竿燈祭りは秋田市民の心に深く根付いた祭りなのだ。

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