米よし、水よしの秋田県は、寒冷な気候も相まって日本酒作りにぴったりの土地柄である。さらに江戸時代の鉱山開発に伴い、鉱山で働く人たち向けに酒造業が大きく発展した。娯楽の少ない鉱山周辺では酒はなくてはならない存在だったようだ。昭和初期の記録によれば、秋田の日本酒は「太平山」が品評会で1位を取るなど、全国的にも評価が高かったという。
さて、酒どころである秋田の飲みの席に「練習」という文化があるのはご存知だろうか。飲み会のメンバー全員が揃って乾杯をする前に、フライングして先に飲み始めてしまうのが「練習」。つまり、「乾杯の練習」のことである。待ち合わせの時間に遅れる人がいても先に着いた人が待たずに飲み始められる「練習」は、お互いに気を使わなくて済む、という思いやりだと言われているが、真偽のほどはわからない。
「ただの酒好きの言い訳では?!」とも思えるこの風習。実際、秋田県民は、日本一酒に強い県民だという調査結果がある。ちなみに2位は鹿児島県、3位が岩手県、4位は福岡県だそうだ。酒に強い体質に、うまい酒。「練習」の文化が生まれたのも必然だったのかもしれない。
秋田駅には秋田の銘酒を気軽に味わえる立ち飲みバー「あきたくらす」がある。秋田県の玄関口とも言えるこの場所で、受け継がれる味に酔いしれながら、酒どころならではの「練習」という文化を目撃できたらラッキーだ。