鬼ごっこ、縄跳び、かくれんぼ、お手玉、おはじき、メンコ。これらは当時の子どもたちの遊びの数々だ。壁画に描かれているのは、雪室でおままごとをしている女の子たち。牛若丸のような髪を結い、わらで編んだ長靴のような雪靴を履いている。
雪でできたドーム状のものは一般に「かまくら」と呼ばれているが、本来は小正月の行事のひとつで五穀豊穣を祈る祭りのことを「かまくら」と言った。農作物を荒らす鳥を追い払う「鳥追い行事」として鳥追い小屋を建て、それを燃やして悪いものを祓う行事だったという。雪の多い地域では鳥追い小屋を雪室で作ったため、しだいにその雪室のことを行事名の「かまくら」と呼ぶようになったものらしい。
寒さにも負けず、戸外で元気で遊ぶ子どもたちの姿。フジタはその画業の初期から晩年まで、子どもをモチーフとして取り上げてきた。壁画に描かれた秋田の子どもたちの愛らしさは、北国の子どもたちに向けるフジタの親しみのこもった眼差しの温かさを感じさせる。
※現在では横手市の「横手のかまくら」で秋田の行事に描かれた雪室に近い光景を見ることができる。一方、仙北市の角館では、雪の中で火の輪が踊るお祭り「火振りかまくら」としてその姿を受け継いでいる。