「あそこには何かある。」
伊勢堂岱遺跡があるこの場所は、昔からそう言い伝えられてきた。「伊勢堂岱」という名前の由来もそう。「伊勢堂」は地域で祀られてきた神社のこと、「岱」はこんもりと高い山のことを表す。「伊勢堂岱」という名前は江戸時代からの地名でもあるのだが、「あそこには何かある」という予感を当時の人も感じていたのかもしれない。
伊勢堂岱遺跡が発見されたのは、1995年。大館能代空港へのアクセス道路建設に先立つ発掘調査でのことだった。「何かあるとは思っていたけれど、まさかストーンサークルが出てくるとは!」と驚いた人も多かったという。
そして、現在。伊勢堂岱遺跡は、地元で「おらほの遺跡」と呼ばれている。「おらほ」とは「おらの」、つまり、自分たちの遺跡という意味だ。発見されたストーンサークルを保存してほしいと、地元の人たちが声を上げたのを受け、秋田県は道路を大きく北に迂回させた。その痕跡が、この場所に残る「橋脚」である。ここまで進んでいた道路工事を中止してまで遺跡を残したいと願ったのは、ほかならぬ地元の人々だったのだ。