伊勢堂岱遺跡のストーンサークルは円の形が「いびつ」である。同時代にきれいな円の形をしたストーンサークルも見つかっているので、きれいな丸を作ろうと思えば作れたはずだ。しかし、伊勢堂岱遺跡を作った縄文人は、あえてそうしなかった。なぜなのだろう。
伊勢堂岱遺跡のストーンサークルは約200年の月日をかけて作られたといわれている。「今年はここまで作りましょう、来年はその続きを作りましょう」と、コツコツと石を増やしていったのだ。しかも、ストーンサークルを作ることは複数の集落が関わる共同事業で「それぞれの持ち場」があったという説もある。つまり、集落ごとに割り当てられた区分があったのかもしれない。そのため、担当によって関わる人数やモチベーションのばらつきがあり、それが、いびつな円の形に表れているのではないかというのである。
それにしても、この環状列石Bはあまりにも未完成に見える。半円にすらなっていないのだ。しかし、こう考えることもできる。縄文人ははじめから完成など目指していなかった。「石を置く」という行為そのものに意味があり、石を置くたびに常に完成していたのだ、と。