※ここは五社堂に行くための駐車場。五社堂に辿り着くには長い階段をのぼっていくしかない。
ナマハゲの伝説としてもっともポピュラーなのが、漢の武帝にまつわるものである。かつての中国、漢の第七代皇帝が、白い鹿にまたがって男鹿半島に飛来したという伝説だ。武帝はどうやら、男鹿半島に不老長寿の薬草を探しに来たらしい。このとき伴ってきたのが5匹のコウモリで、そのコウモリは5匹の鬼に姿を変え、武帝に仕えた。武帝は年に一度、正月にだけ鬼たちに休暇を与えた。自由を許された鬼は里へ降り、農作物や家畜を奪って暴れるだけでなく、娘までさらっていくようになる。困り果てた村人たちは、鬼に賭けを申し入れることにした。
「お山の上まで一晩のうちに千段の石段を築けば、毎年娘を一人差し上げるとお約束しましょう。しかし、もし一晩でできなければ、二度と里には降りて来ないでいただきたい」
鬼たちは日が暮れるのを待つと、意気揚々と石段を築き始めた。山から切り出した岩を軽々と投げ入れ、夜明け近くにはあっという間に999段の石段が築き上げられた。慌てた村人は、夜が明ける前に、アマノジャクに時を告げる鳴き声を上げさせた。千段まであと一段というところで、夜が明けてしまったと思い込んだ鬼たちは大層悔しがり、杉の大木を引き抜いて逆さに突き刺して去って行ったという。その「逆さ杉」は、現在では逆さには刺さっていないが、五社堂境内の社務所で保存されている。鬼をだました村人たちはそのタタリを恐れ、その恐ろしさを忘れないようにと年に一度正月に鬼を演じ、酒と御馳走でもてなすようになった。これがナマハゲ行事の始まりであるという。
本当に999段なのだろうか? 数えてみようにも、入り組んだ石段のどこからどこまでを一段と数えるべきか、悩むところである。