※館内ではまわりのお客様にご迷惑とならないよう、イヤフォンをご使用ください。

参拝のときに見えているのは、ほんの一部。神の住まうエリアは実に広い。せんぐう館の「外宮殿舎配置模型」は、正殿のある敷地を20分の1のサイズで再現されていて、その広大さをひと目で見渡せる。ふだんは立ち入ることのできない敷地を模型で見ながら想像をふくらませてみると、正宮でお祈りをする場所のその先は厳重に、かつ丁重に、囲いが4つめぐらされた、豊受大御神を祀る正殿がある。体の心臓のように大切な場所。けがされることなく、神聖な空気が張り詰めた敷地は「おたから」と呼ぶには言葉が足りないぐらいである。

神職以外は立ち入ることのできない神の領域は、祭りを行う場所でもある。年間1500以上あるといわれる神宮の祭典で、外宮のみで行われているのが日別朝夕大御饌祭。雨の日も風の日も一日も欠かさず神職が奉仕する建物が、垣根の隅に建つ。この建物は弥生時代に穀物を入れた高床式の倉庫が原点だが、構造は他の殿舎と異なる「井楼組(せいろうぐみ)」という様式で、 豊受大御神がここに鎮まって以来、 1500年にわたり営まれてきた祭りの伝統を物語るかのようだ。

四重の垣根がめぐらされた場所に正殿がたたずむ。この建物の扉が開くのは、三節祭という神宮で最も由緒深い祭典のみ。天皇陛下のお使いである勅使が神宮に出向き、陛下のお供物が奉納される。静寂に包まれ、扉の開く鈍い音が響き渡り、祈りと感謝が捧げられる。

模型のそばでは外宮正殿の建物が原寸大でそびえ立つ。遷宮に携わった宮大工がヒノキやススキなど本物の正殿と同じ自然素材を使ってつくり上げたもので、東側面が再現されている。高さは約12メートルになり、正殿の大きさを間近に体感でき、構造の細部を確認できる貴重な資料だ。中央の太い柱は棟持柱といい、わずかに傾いて立っていて、その傾斜は2.5度。これは「内転び」と呼ばれるそうだ。屋根はこの棟持柱ではなく、板壁で支えられており、乾燥と膨張を繰り返す板木の性質を見抜いて設計されている。遷宮は、木の特質を読み取る宮大工の、さまざまな経験と技術によって支えられている。神宮の宮大工が実際に使った鑿(のみ)や鉋(かんな)の道具類、また造営の工程や祭りも興味深い。その中に、樹齢約100年のヒノキの切り株に、梢を挿した「鳥総(とぶさ)立て」がある。遷宮で社殿を造営する際には約1万3千本のヒノキが必要となるが、長い時間をかけて育まれた木への感謝が、この山のしきたり。年長者が切り株の真ん中に斧目を入れ、一番の若手が先端部分の梢を挿す。森の再生を願い、木の元と末を山に返すのだという。

技とその心を未来へと技とその心を未来へと継承して伝えていく神宮の営み「式年遷宮」は 、古いしきたりを守って新しくしていく精神で、1300年の間、連綿と続けられる。

Next Contents

Select language