「うがみんしょーらん」という島言葉は「こんにちは」という意味。うがみとは「拝み」。いわば「お顔を拝ませてもらいますね」というような最上級の丁寧語があいさつ言葉になっている。拝むというのは神様に自分の清らかさを示して相手を尊重するということ。人と人がお互いに拝みあうというあいさつ言葉は、奄美の人たちの慎み深い性格があらわれているのかもしれない。

さて、旅のはじまりは「あらば食堂」から。あらば食堂で食べられるのは郷土料理より“昔なつかし”の家庭料理。料理をしているのは地域に住むおばたちで、月曜日のおば、火曜日のおば、といった具合に、毎日おばが変わる。だから日替わり定食ならぬ、“おば替わり定食”。野菜はおばたちが自分の畑から持ってきたりする。

たとえば、アザミの煮物。下ごしらえに手間がかかることから近ごろではあまり食べられなくなってきた家庭料理。だからこそ、「はげ〜!なつかしゃ〜!」という声が上がる。懐かしい、そんなセリフが聞こえたら、それは地元のお客さんかもしれない。ぜひ「うがみんしょーらん」を使って話しかけてみてほしい。

……はずかしい? そんなときは食堂にいるおばたちに「うがみんしょーらん」を使ってみよう。料理をただ出すだけじゃなくて、おばも前に出てしゃべってくれる。あらば食堂は「美味しかった=まっさりょっと!」で終わらない、人と人との交流がはじまる場所なのだ。おばたちも「一週間に一日、ここに来るのが楽しみ!」とのことで、月曜日のおばがポロッとこぼした「年をとっても地域で良い顔して生活できたらいいね。」その実感のこもった語りぶりが、じんわりと心にしみる、あらば食堂なのでした。

〜秋名こぼれ話〜

「うがみんしょーらん」という島言葉は、現在はあまり使われていない。とくに若者に「うがみんしょーらん」と声をかけた場合、一瞬のとまどいのち「こんにちは」と返されてしまうかもしれない。実は「うがみんしょーらん」は「レディース&ジェントルマン!」と声を上げるような集まりの場では使うものの、日常のあいさつで使うことは稀であるのが実際のところ。

それでも、「うがみんしょーらん」は奄美のあいさつ言葉としてテレビやラジオで広く普及しているし、あえて旅人が「うがみんしょーらん」を使うことで、そのアンバランスさが会話のきっかけになることは変わりない。ぜひ、実際に試して反応をうかがってみてほしい。

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