劣化した標識文字、道端に放置された物、野良猫の足跡。ここは、東京の風景の中に潜む”街の記憶”を追想する空間だ。 足元には青い釉薬で彩られた常滑焼のタイルが一面に敷き詰められている。

”外で遊ぶ”ことをテーマにもつアーティストチーム・EVERYDAY HOLIDAY SQUADにより、「屋外で用いる素材をあえて使用し、スイートルームをつくる」というかつてない実験的な部屋がつくられた。

ベッドを囲うのは縁石、壁もよく見ると家の外壁のようだ。もちろん、ソファに使用されている素材は、屋外で多く用いられれているもの。真ん中のマンホールのような蓋は取り外し可能。あなたの過ごしやすいように、カスタマイズしてほしい。ベッドと反対方向の奥には、自動販売機と屋外用のゴミ箱が設置されている。自動販売機で販売されているのは、ここでしか手に入らないオリジナルステッカーなので、興味をもった人はぜひ購入してみてほしい。

ここでは本来なら屋外に設置されるものが室内に持ち込まれ、家具や調度品として生かされている。 外の道端を切り取って、部屋の中に入れるように。部屋のどこかには、鍵にまつわる作品もいくつか登場する。なぜここには鍵があるのかという意味を見つけてみても楽しい。

一通り部屋を見渡したら、部屋に敷かれたタイルを1つ1つ見つめてみよう。路上に落ちていた傘、脱ぎ捨てられたジャケット、どこかのビルの「定礎」の文字。敷き詰められたタイルは、東京の街角の路面や壁面を3Dスキャニングし、3Dプリントの技術を応用して制作された。タイルという形で保存された街の記憶。その記憶にそっと手で触れたり、裸足で踏んでみたり、はたまた寝そべってみたり。街の記憶に思いを巡らせながら、東京の夜をゆったりと過ごしてほしい。

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