植物の知恵をインストール。
今回は「施す力」を、カカオから学びます。

カカオといえばチョコレート。世界中の人から愛されていますよね。
しかしこのカカオ、限定された環境でしか育たないことを知っていましたか?

その環境とは次の全ての条件を満たしている場所のこと。北緯20度から南緯20度。標高は30から300メートル。年間の平均気温は約27度で、かつ気温差が小さく、年間の降水量が最低でも1000ミリ以上ある。これは多くの他の植物にとっても、好ましい環境なので、周りにはたくさんの植物が生息しています。さらにカカオは日陰を作ってくれる木の下でしか育つことができないという制約もあります。その中でいかに昆虫たちに受粉を手伝ってもらい、動物たちにタネを運んでもらうか。そのためにカカオが持っているのが、「施す力」なのです。

カカオの木を見てみてください。多くの木は、枝を伸ばしたその先に花がつきますが、カカオは幹に直接、たくさんの白い小さな花を咲かせます。なんとなく無防備な感じがしますが、これはどんな昆虫でも花粉を受け取れるようにするため。枝先まで這ったり飛んだりする必要がなく、かつ花が小さければ、小さな昆虫でも雄しべや雌しべに辿り着くことができます。実際に小さな蚊の仲間でさえも、カカオの花粉を運ぶことができるようです。

時期によっては、幹にびっしり実がなっているのが見えるかもしれません。この実に入っているのが動物を魅了するカフェインやテオブロミン。人間も大好きな成分が含まれる美味しい実を食べた動物は、その種を別の場所へと運んでいき、結果的にカカオの繁殖を助けます。その最たる例が人間、ともいえるかもしれませんね。

敷居を低く、みんなに届きやすくすること、出し惜しみなくたっぷり美味しいこと。繊細さも併せ持つカカオが、立派に生きられているのは、この「施す力」があるからなのです。

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それでは、この施す力を、カカオから受け取ってみましょう。

目を瞑ります。
まず、施すという意味を解いていきましょう。心の綺麗な人間がやるもの、ボランティアや寄付、あるいは傲慢なことかしれないといったイメージは一旦、脇においてください。
そしてあなたがちょっと誰かに何かを差し出した瞬間、それを楽しみながらおこなった瞬間のことを思い浮かべてみましょう。

たとえば、
植物に水を与えた
あるいは家族にご飯をつくった
同僚にあなたから挨拶をした
コンビニエンスストアの店員さんに心をこめてありがとうと言った
誰かにむかって微笑みかけた
家事をした
仕事をした

さあ、思い当たる「施し」はありましたか?
施し、とは必ずしも大きなことではなくて、小さいことでもよいのです。
毎日のルーティンワークの中でもあなたは、周りに施しています。
和顔施・愛語施(わげん・あいご)。という言葉があります。なごやかな顔でいること・気持ちのこもった言葉を発すること。つまり笑顔と挨拶が一番の施し、という考え方です。

次に普段、そのような施しをしている相手、あるいはこれから施したいと思っている相手を想像してみてください。その相手に明日からあなたはどのように接しますか?15秒ほど、考えてみてください。

最後に、あなたが最近「いやいや」やっていたことを思い浮かべてみてください。たとえば、家の掃除。あるいは時間のかかる仕事でもいいかもしれません。それをすることを、あえて「施している」と言ってみると、どんな気持ちがしますか? こちらも15秒ほど、どうぞ。

面倒くさいと思うことでも、まあいいや、施そう! というスイッチが入ると急に気持ちがすっきりするかもしません。実は施すという行為には、施した側が幸せになるという側面があります。人生は施しあい、そういう境地にたどり着けたら、生活は明るく、人生はなお豊かになります。

次にチョコレートを食べる時は、ぜひ「施しの力」を思い出してみてください。あなたも小さな施しをしていることを認識して、それをさせてもらえることに感謝してみましょう。

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