最強、トイレの神様

この家のもうひとつの宝物は、フールと呼ばれるトイレ。家の裏にあるのを見つけられただろうか?驚くかもしれないが、昔は豚小屋が人間のトイレを兼ねていて、トイレに行きくたなったら、その都度、豚にはどいてもらって用を足していた。

この豚小屋兼トイレには神様が宿っている。沖縄の家には色々な屋敷神がいて、フールの神が一番強い神と考える地域もあるほどだ。

大人も子どもも、帰ってくると家に入る前にまずトイレに寄ることで悪運を落とす。昔はよその家を訪ねるときに、まずフールまで行って豚の様子を伺い、良い豚を飼っていますね、と挨拶する地域もあったという。

このフール、実は非常にエコな仕組みでもある。人間の排泄物はその半分が未消化のまま残っているそうだ。これを活用せずに捨てるのはもったいない。フールでは人間が用を足すと、豚がそれを食べて分解してくれた。その豚の糞と敷藁を発酵させると良質な有機肥料ができた。つまり養豚と廃棄物処理、有機肥料をつくることがセットになっていたのだ。

衛生面から明治時代に禁止令が出て、次第に姿を消していったが、フールは21世紀の課題とも言える廃棄物処理を解決し、ゼロエミッションを達成していた。循環型経済はトイレで実現されていた、といっても過言ではないかもしれない。

見上げるとオオハマボウの木。この葉っぱは、トイレットペーパーの役割を果たしていた。ここでもゴミは出ない。

フールは、循環を実現してくれる場所。
沖縄の人々は、巡ることを宝としていたのである。

Next Contents

Select language