地図に記された宝物は全て見つかっただろうか?
ここで、約2,000年前にタイムスリップしてみてほしい。
あなたは太平洋に浮かぶ小さな島の砂浜に立って、海を見つめている。
村では住み慣れたこの島を出て、新天地に向かうかどうかの話し合いが持たれている。
あなた自身はどんな気持ちだろうか?
どこにあるかも、どんな場所かもわからない島を探しに行くのは、嫌だと思うだろうか?
たとえ食料が先細っていくとしても、この先も同じ島で暮らしたいと思うだろうか?
途中で船が難破してしまうのではないかと、恐怖に慄いているだろうか?
それとも、新しい冒険に心が踊る?
見渡す限り、島影はひとつも見えない。
あるのはどこまでもつづく海と水平線だけ。
少し抽象的な話にはなるが、私たちもこの波打ち際のような景色の前に立つことがあるのではないか。今いる場所から、新しい世界へ漕ぎ出すべきか?それは誰しもが人生の中できっと何度かは経験する問いだ。
かつて島の波打ち際では、それでも前に進むと決めた人々がカヌーに乗った。
彼らは超自然的な力の加護や、海を渡ってきた祖先の航海術を拠り所に旅立ち、星を道標に、風と波の力を味方につけて、長旅の末に新しい島を発見した。そして皆で恵みを分け合い、持ち物を交換しあいながら、また村をつくっていった。
大陸から遠く離れた太平洋の島々は、見えない島を探し出すと決めた人々の勇気と知性によって拓かれた世界。その世界は、自然と対抗するのではなく、自然と一体になって進み、人々がお互いに助け合うことで、広がっていったともいえる。
その軌跡には、私たち自身の冒険へのヒントが詰まっているのではないだろうか。
これで海洋文化館での宝探しは終わり。
あなたは自分の宝物を見つけることができただろうか。
その宝物をもって、また日常の冒険へと旅立ってもらえるなら、これほどうれしいことはない。