「かっこいいなあ、ほしいなあ」

月江寺に向かう道にある、月の江書店。かつては店の前に子どもたちが貼り付いていた。

現在、木で覆われている右側部分は、もともとガラス張りのショーケース。店内で売られているプラモデルの完成形がずらりと並び、近くに寄れないように鉄のフェンスが外にかかっていたという。飛行機や戦艦など、なかなか手に入らないプラモデルを、少年たちは憧れの眼差しで見つめた。

竹ひごと紙でつくる飛行機模型、マブチモーターの水中模型、スーパーカーブーム世代にはたまらないランボルギーニの模型もあった。模型の色塗りグッズなども揃っており、子どもたちにとっては憧れの象徴だった。

そんな大切なプラモデルだが、実際に手に入ると、少年たちは戦艦を月江寺の池に浮かべて遊んだ。石をなげて、それを沈没させるゲームまであったのだ。

どの戦艦に当たってもお互い様、恨みっこなし。大人になった人々はそう振り返るけれど、宝物のプラモデルが沈んでも本当に喧嘩が起こらなかったのか。それは当時の少年達しか知らない。

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