「今年は写真屋のお姉ちゃんだって。きれいだもんなあ」

ティアラをかぶり、ドレスをまとった美女が、オープンカーに乗せられ商店街を横切っていく。昭和28年(1953年)に始まった花形イベント「ミス富士コンテスト」の、優勝者を始めとした入賞者たちである。

当初、商店街の販促の一環として始まったミス富士コンテスト。商店街の店で何かを買うごとに投票券がもらえ、それを人々は候補者の誰かに投票した。大切な娘に一票、お気に入りのあの子に一票、密かに想いを寄せるあの人に一票。

エントリーは自薦他薦は問わなかったが、当時はほとんどが他薦だっただろう。優勝者には、将来欠かせない嫁入り道具、桐箪笥が贈られた。オープンカーでのパレードを見ながら、少女たちは「いつか自分も……」と羨望の眼差しを向けていたという。

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