「雪代(ゆきしろ)は、突然やってくる」

冬に積もりに積もった富士山の雪が、春の陽気で溶けてくる。雪解け水は、富士山の麓の人々の生活を潤す、と同時に脅かす存在でもあった。

溶けた富士山の雪が、土砂とともに押し寄せる「雪代(ゆきしろ)」により、富士吉田では過去に土砂災害が発生。特に影響を受けやすかったのが、市内の中心を流れる宮川である。

大きな被害は昭和36年(1961年)3月、大量の土砂が川に流れ込み氾濫。宮川沿いの家屋130戸が土砂に埋まった。予報もなく突然の雪代に、近所の住民がみんな屋根に登り、あふれる川を見下ろしていたという。そのときの経験から、宮川は現在の水位まで深く掘り込まれることになった。富士山上流域での砂防対策もあり、それから長い間、雪代は発生していない。

宮川の付近には、家が多い。しかも、宮川につながる小さな水路が家々の下を通っているのだ。近くの家々の下をのぞくと小さな水路の上に建っている家が見つかる。家主は今でも、春が来るたびに、当時のことを思い出しているだろう。

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