「見事なトマソンだ!」

『超芸術トマソン』という概念をご存知だろうか。建物に特化して、「まるで展示するかのように美しく保存されている無用の長物」を指す。これを定義し、名付けたのは、日本の美術家で芥川賞作家でもある赤瀬川原平だ。

その語源は、80年代に読売ジャイアンツに所属したプロ野球選手、ゲーリー・トマソンからきている。彼は2年目以降これといった活躍がなく、むしろ空振りなどの不発が目立ったにも関わらず、四番打者として出場し続けたという。

そんな姿が赤瀬川氏が研究していた、「まるで役に立たないのになぜか美しく保存されているもの」とリンクし、『超芸術トマソン』という概念が生まれた。

「トマソン建築」とも呼ばれるこれらの建物を探しに全国を調査した赤瀬川氏が、平成12年(2000年)にこの富士吉田にも来たことがある。ここでは、彼が「一級品だ!」と感動した、トマソン建築を紹介しよう。

普段は人が通らないような小道に入ると、ある建物の壁に階段が付いている。ところが、この階段を目で追えば、どこにもつながっていないことに気付くはずだ。「無用階段」、そう呼ばれる部類のトマソン建築である。

また、無用階段から大通りの向こう側を見ると、壁面に何やら帆船のようなものが描かれている。これは誰かがデザインして描いたわけではない。ガスメーターか何かの名残、自然と色づいてしまったようだ。これも、赤瀬川氏を感動させたトマソン建築。

この町には、まだまだ隠れたトマソン建築がある。歩きながら探してみてほしい。

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