その一言が、ビールを進化させる

アメリカやヨーロッパでは、家庭でビールを醸造するホームブルーイングが今でも盛ん。販売はできないけれど、醸造したビールを自分で飲んだり、友人たちとのホームパーティで振る舞ったりしている。クラフトビール大国のアメリカでは、ホームブルワーはなんと100万人以上。ビール好きなら自分で造ったことがあるか、それがなくてもホームブルーイングのビールを飲んだことがある人は多い。

そこでは、「この前よりおいしくなったね!」「いやいや、俺はもっと苦い方が好きだ」なんて会話が交わされているのだろう。仲間たちとのコミュニケーションで、ビールの味は日々進化していく。

Shared Breweryの「Zesty Hops IPA」も、ファンとの共有でアップデートを続けてきたクラフトビール。ベルギーのクラシカルなベースビールに、最先端のホッピング技術を融合する。そのコンセプトは守りながら、初代と比べるとまったく別物にまで変化しているそうだ。

ビールを飲んだら、感じたことを正直に伝えてみよう。その一言が、Zesty Hops IPAを進化させるかもしれない。

海外では盛んなホームブルーイングだが、日本では酒税法により、アルコール度数1%を超える飲料の自家醸造は禁じられている。でも、それで日本にクラフトビールの文化は根づくのか? Shared Breweryのオーナーは、そんな問題意識を抱いている。

「子どもの頃からスポーツをやっていて、プロを目指すようになる。そんな風に、自宅のキッチンでビールを造った経験からプロのブルワーを目指す人が増えるといいと思っています。実際、海外ではホームブルーイングからプロのブルワーに転身する人も多いですから」

Shared Breweryでは、ビール好きな個人や製造免許のない飲食店がブルーイングを体験し、オリジナルのビールを造れる。さらにここで醸造したビールはラベルに記載のQRコードを読み取ると、クローンビールのレシピを見ることも可能。オーナーは「レシピは共有財産。ファンと一緒にアップデートしていくのがコンセプトなんです」と語る。

「飲んだ人の表情で、おいしいかどうかはすぐにわかる。毎日がテストマーケティングです」とオーナー。そのトライ&エラーは、緊張感がありながら充実したものだ。実際、店ができてから今までの間に、お客さんの舌も知識も大きくレベルアップしていて、より高度な議論が交わせるようになってきたという。

作り手だけじゃなく、飲む人も一緒に成長していく。オープンなサークルの中で、きっとカルチャーが育っていく。

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