時は大正。門司港から異国の地を目指し、一カ月に60隻もの客船が海を渡った。

その拠点のひとつが大阪商船ビルだった。屋根に設けられたのは大きなアーチを配した隅角部の窓。窓の上部にある八角型の塔屋は、ドイツやオーストリアの革新運動・ゼツェシオンの影響を受けたと言われている。木造二階建てで、一部はレンガ型枠のコンクリート造り。まだ見ぬ異国に胸を高鳴らせる人々の期待は、旧大阪商船を見てどれほど高まったことだろう。海に面した旧大阪商船ビルで、船に乗る人々は専用の桟橋から直接行き来した。ここには出会いがあり、別れもあった。

今も旧大阪商船ビルは門司港にたたずむ。大正時代の余韻を残したまま。

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