レッスン2|植物から見る心象風景

新宿御苑は生きた植物図鑑。 まるで「ノアの箱庭」

一周3.5km、面積は58.3ha。その広さはグーグルマップでも一目瞭然。それも、都心とは思えないほどの緑である。これは内藤家によって守られた緑であり、明治政府によって世界中の植物が集められた緑であり、皇族の庭園として美しさに磨きがかけられた緑でもある。

たとえば、新宿御苑には様々な植物とその解説がある。本で見る植物図鑑とは違って、自分の目で見る本物の植物図鑑だ。これは明治政府の研究所だった背景によるもの。なんでも明治10年にして3,000種を超える植物を集めていたという。

それを知ったうえで新宿御苑を歩いてみると、まるでノアの箱船ならぬ、ノアの箱庭のように見えてくるのではないだろうか。

桜の数、1,100本。最も観光客が増えるのは春のお花見

サクラの種類だけでも65種類。ソメイヨシノ、イチヨウ、オオシマザクラ、ヤエベニシダレ、コヒガンザクラ……。数でいえば1,100本のサクラがあり、春は花見客によって緑の芝生がビニールシートの青で染まるほど。

花見には78万人もの人が訪れるとも言われているが、新宿御苑はアルコール類の持ちこみが禁止されている。日本の公園では珍しいルールだが、それゆえに人は多くても静かにサクラを見ることができるのだ。

開花時期は品種によって異なるが、新宿御苑はその種類が多いため、3月中旬から4月の中旬にかけて、比較的長いあいだ花見ができる。剪定されていない木も多いため、サクラを見上げるのではなく、全身がサクラに包まれるような花見ができるのも新宿御苑ならではと言えるだろう。

都内ではほかに見ることができない大木も

ほかにも、不思議な形をしたヒマラヤ杉、世界的にも珍しいレバノン杉、40mを超えるスズカケ、左右対称のプラタナス並木、剪定されていないイチョウなど。全国で見られる街路樹も、新宿御苑で育てた苗木を移したものが多い。

木々のひとつひとつに物語があり、それを知ることで見える風景が変わってくる。ここでは16の風景にまつわる物語を紹介する。どこから旅をはじめてもかまわないのだが、まずは新宿門からはいってすぐに見えるヒマラヤ杉。ここから、心象風景を見つめる旅をはじめてほしいと思う。

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