門司港の魅力は門司港レトロだけではない。駅から少し離れた場所に行くと、昭和の香りが漂う「栄町銀天街」がある。この商店街が栄えていたのは、日本が進化を遂げた高度成長期の頃。店主たちは多くの従業員を雇い、威勢よく働いて客を招き入れた。店が閉まると飲みに行き、帰るのは午前様。祭りがあるときも提灯はいらない。すべての店が開き、明かりが灯され、街中が光り輝いた。そんな華やかな時代と親の姿を、店を継ぐことになる子供たち、たとえば白石商店は見てきた。

やがて高度成長期は終焉を迎えた。今は静かな栄町銀天街で、昔を知る人々は当時の賑わいがなくなったことを、時折寂しく思う。ただ先代から受け継いだものと自分が考えた新しいものを組み合わせれば、きっと新しい何かが生み出せると気持ちを切り替え、存続している店もたくさんある。

門司港レトロとは趣の異なる、昔ながらの下町、栄町銀天街。

郷愁の念を抱きながら地元の人が歩く。観光客が歩く。店をのぞくお客さんを、今日も店主は明るい笑顔で出迎える。店を切り盛りする人のいきいきとした笑顔だけは、栄町銀天街が賑わっていた時代から変わっていない。

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