日本の製鉄業と言えば、八幡。そう言われていた時代があった。鉄を生み出すために高炉は欠かせない場所である。

──高炉で鉄を取り出すために鉄鉱石を溶かす。作業員の額に汗がにじむ。

石炭を蒸し焼きにしたものをコークスという。鉄を出すにはコークスに熱風をあてなければならない。作業着を着ながらの作業は、暑くて仕方がない。溶けた鉄の近くでの作業は危険を伴う。だが作業員たちの真剣なまなざしには覚悟が感じられる。

作業が終われば給料がもらえる。家族においしい飯を食わせよう。明日は休みだから、酒を飲むのもいいだろう。休憩時間になると、いつもそう思い自分を励ます。

「よし」

再び作業が始まる──

高度成長期が終わると高炉も役目を終えるが、東田第一高炉は今も大きな外観を保ち八幡を見下ろす。八幡の歩んできた道を自分は知っている。誇りを持ってそう語る当時の作業員たちの姿が、目に浮かぶようだ。

Next Contents

Select language