石井さんの住まいであったが、現在は誰も住んでいない。PROJECT ATAMI でアートの舞台となる場所を探していたとき、石井さんは「力になれるなら」と真っ先に手を挙げた。建物のすぐ近くには地元の子どもたちが遊ぶ公園があり、その子どもたちにアートにふれてほしかった。アーティストが絵を描く背中を見せたかったと石井さんは言う。
そうして、絵を描いてもらうことが決まった矢先のこと。2021年の伊豆山土砂災害によって、石井さんの別の家が土砂に埋もれて解体することになった。そのことを知ったアーティストは土砂災害をモチーフに絵を描くことにした。
虎の絵は、東北に伝わる虎舞いから。「雲は龍に従い、風は虎に従う」の故事にならい、虎の威を借りて風をしずめる。そう伝承されている虎舞いによって土砂災害が二度と起こらないことを祈願している。また、目玉焼きとソーセージのスマイルは何が起きてもまた新しい朝が来るという想いをこめて。受話器はあの世と会話できるつながりをあらわすものとして描かれている。