ゆったりと広がる芝生、のびのびと育った大木。自然をありのままに生かした庭づくりがイギリス式。人工的な美しさを追求するフランス式に対抗して生まれたカルチャーである。当時、イギリスの詩人アレキサンダー・ポープは「庭づくりは風景画を描くことに同じ」と提言した。貴族のあいだで風景画が流行していて、画家が描いたような風景を現実の風景に求めたのだ。自然にはありえない直線を避け、曲線と起伏を生かした自然のままの庭園。新宿御苑のイギリス式風景庭園もそれは同じ。そして、それは日本庭園とつながっている。では、日本庭園との違いはなにか。イギリス式は自然を等身大で表現する。日本式は自然をミニチュアで象徴する。それが大きな違いである。
新宿ー新宿ー。プシューー、とドアが開く音がする。潜水して長いあいだ息を止めていたみたいだ。満員電車を降りて息つぎをしたのも束の間。駅構内の人ごみの波にのまれて、あらがいようもなく出口から吐き出される。空を見上げても、東京の空は狭い。高層ビルに囲まれて息が詰まりそうになる。そういうとき、わけもなく新宿御苑に寄りたくなる。新宿門のゲートをくぐり、なんとなく歩いていたつもりが、いつも何かに導かれるように、ここにいる。この芝生から見上げる空は広い。それに、思い切り空気が吸える。360度、見渡す限りの青い空。両手を広げて体ごと、ぐるんと回転したくなる。まるでコンパスをフォーマットするように。自分が本当に目指すべき方向を見失わないために。