大きな欅の一枚板の看板。その書が記されたのは明治33年。明治維新から歴史が大きく動いた時代の11代目当主が自ら書いたものだという。

「古梅園」とは室町時代から続く墨屋で、古くから庭に立派な梅の木があったことに由来する。この看板を見上げて、あなたは何を思うだろう。字は書いた人の性格をあらわすというが、明治の変革期において、これだけの規模を持つ店を支えていかねばならない。当主の頭の中にはいろんな決意が渦巻いていたに違いない。そんな中、新しい看板にどっしりと落ち着いた字で「古梅園」と書き記した。どんなことがあっても動じない。そんな性格が書にあらわれているのかもしれない。

この通りはたくさんの人が行き交うが、ふと、この店の佇まいに惹かれて立ち止まる人は多い。お寺でも神社でもない商家でありながら、ここまで歴史を感じさせる佇まいはめずらしい。そんな歴史の重みにも負けないこの看板。営業後に扉を閉めたあとは、その存在感が引き立ち、看板が光って見えることもあるという。良い看板とは、そんなふうに閉まっていても立派に営業してくれるものなのかもしれない。

しかし、この看板もまたいつの日か新しく掛けかえる日がくるのだろう。その時代の当主はどれほどのプレッシャーを背負うことになるのか。きっと、この看板を作った11代目もまた同じ想いで書いていたに違いない。あなたもぜひ、その気持ちを想像してほしい。

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