燃やされるはずだった手紙

真田信之の甲冑、真田家の先祖が戦で使ったと伝わる刃こぼれのある刀……貴重な品がたくさんあるが、おもしろいのは信之が京都にいる女性へ宛てた手紙。この手紙で信之は、自分がこれから治める松代のことを書き綴っている。

「きりに花咲井ノ上の山も雪気の雲はれてしづかにいづる朝日山 三国一の善光寺 ふれど積らぬあわ雪の浅のと申里々も皆々われらの領分にて候」

手紙の中で、信之は松代がどれだけ良いところかを伝えている。学芸員は、松代への愛と、女性への愛の両方が感じられる手紙だと評する。手紙には「貴女は優しい方なので、私も心のままに書いてしまい恥ずかしく思っています」といった正直な内容も綴られており、二人が親しい関係だったことがうかがえる。

手紙を送ったのは、信之が愛した妻が亡くなって2年ほど経った頃。京都の女性は謎の多い人物で、信之との正確な関係も分かっていない。しかし、互いに慕いあっていたことは確かなのだろう。手紙の最後で、信之は「読んだあとは火に入れて燃やしてほしい」と書いている。にもかかわらず手紙は残って、宝物館にある。女性はこの手紙を燃やすことなく、大切にしまっていたのだろうか。

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