雨雲が描かれた猫型の瓦

江戸時代、このあたりは上級武士が多く暮らすエリアだった。樋口家も上級武士の家柄で、松代藩においても代々重要な役目を担っていたという。真田邸のほぼ向かいにあることからも、その信頼関係がうかがえる。

樋口家とその周辺には、街歩きをする上で知っておくと良い城下町の特徴が残っている。まずは樋口家住宅の門に向かって右側、文武学校のほうを見てみよう。道がクランク状に曲がっているのがわかるだろうか。これは敵に攻め込まれにくくするための、「鍵曲がり」と呼ばれる仕掛け。あえて道を屈曲させることで、見通しを悪くし、馬に乗った者が曲がりにくくしているのだ。

次に、屋敷のほうを見てみる。門の位置に対して、玄関が斜めにあることに気づくだろう。これも鍵曲がりと同じで、あえてまっすぐにしないことで敵が侵入しにくくなっている。

敷地内に入ったら、今度は住宅の屋根を見上げてみよう。屋根の先端に変わった瓦がついているが、一体何のかたちに見えるだろうか? 正解は猫の顔を象ったもので、猫面瓦という。この地域は農家の副業として蚕を育てていたため、蚕を食べてしまうネズミは厄介な存在だった。そこで、ネズミの天敵である猫の瓦をまじないとして掲げているのだ。ちなみに、猫面の中心には雨雲の絵や、「水」の文字が記されていることが多い。これは火事を防ぐための火除けのまじないだ。

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