松代の人が愛した、水のある風景

坂道の脇には、水路が流れている。覗き込むと、小さなしじみの貝殻をすぐに見つけることができるだろう。しじみは、綺麗な水でしか棲息できない。しじみがいるような水路は、今では日本にほとんど残っていないのだという。

これまで歩いてきた道を振り返る。ゆるやかな坂道になっていて、その傾斜を利用しながら、水路を水が流れていく。神田川から取り入れられた水は、まずはこの付近の邸宅や、象山神社の庭を経由する。人々は水のある風景を愛し、かつてはここで顔や食器を洗った。水は、ここからさらに下流へ流れていく。自分たちだけのものではないから、松代の人は水を大切に、なるべく汚さずに使おうとした。そうすることで、連帯感も育まれた。

生活の変化によって水のあり方は変わりつつある。それでも、松代の人は水のある景色を残したいと考えている。その思いが、泉水路のある風景を守り続けている。これだけの規模の泉水路が残っているのは、今では松代だけだ。清らかな水は、変わらない景色を愛する松代の人の純粋な思いを象徴しているのかもしれない。

この水はきっと、綺麗なまま松代城の水堀へと行き着くのだろう。

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