その陶苑の入り口には、年代物の松代焼の壺が飾られている。壺の縁を見ると、六文銭のような6つの丸が刻まれている。やっぱり松代だから真田の家紋なのか、そう思って隣に目を移すと、こちらには丸が5つしかない。実はこれ、家紋ではなく壺の容量を示しているのだそう。庶民の日用品として普及した松代焼は、どこまでも実用的だ。
松代焼の特徴は、鮮やかな青緑色。鉄分の多い地元の土を使った器に、自然の素材で調合した釉薬をかけると、両者が反応しあってこの色が生まれるのだという。時の藩主が青々とした竹林を好んだため、この青緑色が普及したという説もあるそうだ。
松代陶苑では、釉薬に地元の温泉水を使っているという。こうすると、釉薬の灰がむらなく混ざり合い、扱いやすくなるのだとか。色合いもやわらかくなり、どんな食べ物にも合う器に仕上がるという。