伝説を残す最後の修験者

かつては女人禁制だった戸隠だが、「最後の修験者」と呼ばれている人物は女性だった。時代は昭和。中国での修行ののちに戸隠に入った彼女は、冬はマイナス20度になる戸隠山の小屋にこもり、2年半にわたる厳しい修行を積んだ。

当時は修験道をする者がいなくなっていたため、怪しんだ地域の人が通報したこともあったそうだ。しかし警察は「東京から大事にするようにお達しが来ている」と言い、彼女に米を届けたという。さらに、彼女はかつての修験者が用いた洞窟を復活させ、再び整備している。三十三ある洞窟を、村の若者たちと一緒にめぐり、石の祠を安置したそうだ。現代でも行くのが大変な洞窟に祠を運ぶのは、並大抵のことではなかっただろう。その彼女が建てたのが、この公明院なのだ。

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