修験者は命をかけて山頂を目指した

参道で周囲を見渡すと、険しい戸隠連峰がこの場所を取り巻いている。霊験あらたかな修験道の地として発展し、多くの修験者が訪れた戸隠では、これらの山々も修行の場となっていた。

もっとも高いのが、参道の右手側にある高妻山だ。標高2300メートルを越えるその山頂には、とある修験者が安置した高さ2メートル、重さ40キロの鏡がある。険しい山道でそんな大きな鏡をどう運んだのか想像もつかないが、戸隠連峰の最高峰である高妻山は、修験者にとっての到達点であったのだろう。

奥社参道には、その鏡を設置した記念の石碑が立つ。高妻山へ向かう修験者たちは「早駆け」と呼ばれる厳しい修業に出たと伝わる。早駆けとは、麓から高妻山の頂上まで走って行き、1日で戻ってくるというものだ。道の整備や装備も十分ではない当時、成し遂げるには相当な体力と精神力が求められた。足を踏み外したり山の中で迷ったりして戻ってこない者もいただろう。まさに命がけの修行だった。

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