「善光寺」。そう書かれた大きな看板が、改札の出口に掲げられている。この文字の中には、ハトが5羽隠れているという。どこにいるか、探してみてほしい。
ハトを探すうち、別の動物の存在に気づいた人もいるかもしれない。注目してほしいのは、「善」の文字。この文字が、牛の顔に見えると言われているのだ。牛といえば、善光寺には「牛にひかれて善光寺参り」という伝説が残っている。
昔、善光寺から少し離れた村に欲張りで意地悪なおばあさんが住んでいた。ある日おばあさんが洗濯をしていると、どこからか一頭の牛が現れ、その角に白い布を引っ掛けて走り去ってしまった。布を取り戻したい一心で、おばあさんは牛のあとを必死に追いかける。日が暮れるまで走り続けて、気づけば善光寺のそばまで来ていたという。
夜に紛れて、牛は善光寺の本堂へ入って行く。おばあさんも、おそるおそる中へと入ってみた。薄暗い堂の中、ふとおばあさんが足元を見ると、月明かりに照らされた牛のよだれが光っている。それが文字のように見えて、おばあさんは一文字ずつ、その言葉をたどっていった。
「これはただの牛のいたずらではありません。あなたを仏の道へ導くためなのです」。それは、仏様からのメッセージだった。おばあさんはありがたい気持ちになって、奥へと進みお参りをしようとした。するとそこには、牛が持ち去ったあの白い布があったという。
さて、そんなハトと牛の看板の足元には、「十八丁」と刻まれた石もある。これにはどういう意味があるのだろう? そのことを頭の片隅にとどめながら、先へと進もう。