その姫は感謝を捧げて北を向く

長野駅を出ると、訪れる人に背を向けて立っている銅像がある。やさしい笑みを浮かべて捧げ物を手にしたこの女性、名を如是姫と言う。

如是姫はインドのとある金持ちの娘だった。何不自由なく育てられた如是姫だが、ある時重い流行り病にかかってしまう。如是姫の父は、どうにか娘を救いたいと手を尽くした。医者を呼んだり、病気に効く食べ物を用意したりあらゆる方法を試したが、病気はいっこうによくならない。悩みに悩んだ父親が最後に向かったのは、仏教の開祖であるお釈迦様のところ。父親は宗教を信じていなかったが、神仏にすがる以外にもう方法は残されていなかった。

お釈迦様は疲れ切った父親に「西に向かって念仏を唱えなさい」とやさしく伝えた。急いで家に戻った父親は、心をこめて念仏を唱える。必死の思いで唱え続けて、ふと目を開けると、西の空から見たことのない明るい光が広がってきていた。目を凝らすと、光の中にいたのは阿弥陀如来様。その光は、如是姫の枕元にも届いた。すると、たちまち病気が回復したのだそうだ。

善光寺は、この阿弥陀様を祀っている。如是姫は阿弥陀様に感謝を捧げるために、善光寺のある北を向いているのだ。そしてこの伝説から、善光寺は女性を救ってくれるお寺として知られている。

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