田んぼの中の一本道

目の前には、「十六丁」と刻まれた石がある。長野駅で見た「十八丁」の石を思い出してほしい。気付いたかどうかわからないが、ここまでに「十七丁」の石も通り過ぎている。

この石は、善光寺へのカウントダウンをする「丁石」。1丁、つまりおよそ109メートルごとに置かれ、長野駅から善光寺までの道のりを区切っている。

阿弥陀様の48の願いの中では、18番目の願いが一番大事とされている。長野駅から善光寺までの距離も、18丁。このことから、長野駅の場所は阿弥陀様の願いにあやかって決めたと話す人もいる。実際は検討を重ねて合理的な場所を選んだそうだが、それにしても縁起が良い。

十六丁の石があるのは、駅から参道を進み、交差点を右に曲がったあたり。ここから善光寺までは、まっすぐの道が続く。駅ができるまでは、後ろの細い道が参道だったそうだ。その頃、ここには一面田んぼが広がっていた。

想像してみてほしい。かつてこの参道は、田んぼの中の一本道だった。村から何日も歩き続けて、道の先にやっと小さな善光寺が見えてくる。それはまるで、極楽浄土へたどり着くような気持ちだったかもしれない。

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