大蛇を見せ物にした木こり

歩道の中央に、重そうな石が唐突に置かれている。文字は刻まれていないから、丁石でもなさそうだ。歩行者の邪魔になりそうなこの石、実はとある言い伝えで動かすことができない。

その昔、ある木こりが山に木を切りに行った。たくさん働いて、木こりは一休みしようと倒れた大木に腰掛けた。すると、その大木がずるずると動き出したのだ。驚いて見てみると、そこにいたのは木ではなく巨大な蛇。木こりは思わず、持っていた斧を振り下ろしてしまった。蛇は激しくのたうちまわり、木こりを睨みながら息絶えた。

木こりは、動かなくなった蛇を改めてじっくり見てみた。さっきはそれどころではなかったが、こんなに大きく立派な蛇は、これまでに見たことがない。この蛇を見せ物にすれば大儲けができるのではないか──。木こりは、その日はたき木ではなく蛇の死骸を背負って帰った。それからさっそく見せ物小屋を開き、善光寺参りの人を呼び込んだ。怖いもの見たさで次々に人がやってきて、行列が絶えない。狙い通り、木こりは楽に大儲けができたという。

ところがその数日後、木こりはいきなり病にかかって死んでしまった。木こりの妻や大勢いた子どもたちまで次々に死んでいき、近所の者たちまで病気にかかってしまう。蛇の祟りだと恐れた村の人々は、近くにある西光寺に蛇の墓を立てた。さらに蛇を見せ物にした場所に塚を建て、霊を弔ったという。

その塚が、この石だ。蛇の墓とこの石は、動かそうとすると祟りがあると伝わる。そのため、今もこうして道の真ん中に残っている。

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